2026.09.25
改葬の流れと費用、遠方のお墓を移すときの必要書類

「遠方の実家のお墓にお参りに行けなくなった」「今のお墓を、自分が通える場所へ移したい」。そうしたご相談を、当山でもたびたびお受けします。お骨を今のお墓から別の場所へ移すことを「改葬(かいそう)」といいます。ここでは、改葬という言葉が法律上どこまでを指すのか、どんな順番で進むのか、どの書類が要るのかを、初めての方に向けて順を追って整理します。お急ぎになる必要はありません。ご家族と話し合いながら、ひとつずつ進めていただければと思います。
改葬とは何を指す言葉か
改葬は、ふだんの言葉では「お墓の引っ越し」と言われますが、法律上の用語でもあります。墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第2条第3項では、改葬を「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定めています。つまり、すでにお墓や納骨堂に納められているご遺骨を、別のお墓・納骨堂へ移すことが改葬にあたります。
同法第5条により、改葬を行うには、ご遺骨のある場所の市町村長の許可(改葬許可)が必要です。ご自身の判断だけでご遺骨を取り出して運ぶことはできません。ここが、改葬のいちばん大切な前提です。
改葬・墓じまい・分骨の違い
言葉が似ていて混ざりやすいところですので、整理しておきます。
| 言葉 | 指していること |
|---|---|
| 改葬 | ご遺骨を今の墓地・納骨堂から、別の墓地・納骨堂へ移すこと。市町村長の改葬許可が必要(墓地、埋葬等に関する法律第5条) |
| 墓じまい | 今のお墓を撤去し、墓地の区画を管理者へ返すこと。ご遺骨の移し先が必要になるため、多くの場合そのなかに改葬の手続きが含まれます |
| 分骨 | ご遺骨の一部を分けて、別の場所でも供養すること。墓地、埋葬等に関する法律施行規則第5条により、墓地の管理者が発行する分骨用の証明書によって行われ、改葬許可とは別の扱いになります |
「お墓を片づけたい」というご相談の多くは、墓じまいと改葬の両方を含んでいます。両者の関係については墓じまいと永代供養の違い|初めての改葬手続きと費用の内訳でも触れています。
改葬の流れ|どの順番で進めるか

順番を間違えると、あとで戻らなければならない場面が出てきます。大きくは、次の流れになります。
| 順 | すること | 気をつけたいところ |
|---|---|---|
| 1 | ご親族と話し合う | お墓は多くの方の気持ちが関わる場所です。事後報告になると、話がこじれやすくなります |
| 2 | 移す先を決める | 受け入れ先が決まらないと、改葬許可の申請書類がそろいません |
| 3 | 今の墓地の管理者へ伝える | 寺院墓地であればご住職へ。撤去の段取りや、これまでのお礼の相談もここで行います |
| 4 | 改葬許可を申請する | 申請先は、今ご遺骨がある場所の市町村長です。移す先の自治体ではありません |
| 5 | ご遺骨を取り出す | お性根抜き(閉眼の法要)を勤めたうえで石材店に作業を依頼するのが一般的です |
| 6 | 墓石を撤去し、区画を返す | 更地に戻して返すことを求める墓地が多く、費用は石材店の見積りによります |
| 7 | 新しい場所へ納める | 改葬許可証を受け入れ先の管理者へ提出します |
とくに2番目を飛ばさないでください。改葬許可の申請では、移す先が決まっていることを示す書類を求められるのが通例です。「まず取り出してから、置き場所を考える」という進め方はできないとお考えください。
改葬許可申請に必要な書類

墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年厚生省令第24号)第2条では、改葬許可の申請書に、亡くなった方の氏名・本籍・住所、死亡の年月日、埋葬または火葬の場所と年月日、改葬の理由、改葬の場所、申請者の氏名と亡くなった方との関係などを記載することが定められています。あわせて、墓地等の管理者が作成した埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面(または市町村長がこれに準ずると認める書類)を添えること、申請者が墓地使用者等でない場合は墓地使用者等の承諾書などを添えることが定められています。
実務では、次のような名称の書類がそろうことになります。
| 書類 | どこで手に入るか |
|---|---|
| 改葬許可申請書 | 今ご遺骨がある市区町村の窓口、または自治体のホームページ |
| 埋蔵(収蔵)証明書 | 今の墓地・納骨堂の管理者。申請書の欄に署名押印をもらう様式の自治体もあります |
| 受入証明書(使用許可証の写しなど) | 移す先の墓地・納骨堂の管理者 |
| 墓地使用者の承諾書 | 申請する方と墓地の名義人が違う場合に、名義人から |
| 申請者の本人確認書類など | ご自身で用意 |
様式の名称、必要な部数、手数料の有無は市区町村ごとに違います。先にお住まいの自治体ではなく、今ご遺骨がある場所の自治体の窓口またはホームページで確認してください。遠方であれば、郵送で受け付けている自治体もありますので、電話で聞いてみるのが確実です。
ご遺骨が複数あるとき
古いお墓には、思っていたより多くのご遺骨が納められていることがあります。申請書はご遺骨お一人ごとに書く様式が一般的で、許可証もその数だけ交付されます。そのため、取り出す前に、どなたのご遺骨が何体納められているのかを確認しておく必要があります。過去帳(お寺が代々の戒名やご命日を記した帳面)や墓誌、ご親族の記憶が手がかりになります。どうしても分からないときは、その旨を自治体の窓口に相談してください。
今の墓地の管理者へ、どう切り出すか
改葬で気が重いのは、書類よりも、長くお世話になった墓地へ伝える場面かもしれません。お寺の墓地であれば、まずは事情を率直にお話しするのがよいと思います。お参りに通えない、継ぐ人がいない、体が思うように動かない。そうした事情は珍しいものではなく、どのお寺も見聞きしています。
電話だけで済ませず、できれば直接お参りしたうえでお話しになると、話が進みやすくなります(受け止め方はお寺やご担当者によって異なります)。あわせて、お性根抜きの法要をお願いできるか、いつ頃なら勤めていただけるかも、この場で相談しておくと段取りが組みやすくなります。
改葬にかかる費用の内訳
改葬の費用は「いくら」と一言で言えるものではなく、次の項目の合計になります。それぞれどこへ払うものかを分けて考えると、見積りを比べやすくなります。
| 項目 | 支払う先 |
|---|---|
| 改葬許可申請の手数料 | 市区町村。無料の自治体もあり、金額は自治体ごとに異なります |
| お性根抜きの法要のお布施 | 今の墓地で法要を勤めるお寺 |
| 墓石の撤去・区画の整地 | 石材店。区画の広さ、石の量、重機が入れるかどうかで変わります |
| ご遺骨の運搬 | ご自身で運ぶ場合は交通費のみ。業者に依頼する場合はその費用 |
| 移す先へ納めるための費用 | 新しい墓地・納骨堂・永代供養先 |
| 納骨の法要のお布施 | 移す先で法要を勤めるお寺 |
金額の幅が大きいのは墓石の撤去です。お墓ごとに条件が違いますので、現地を見てもらったうえでの見積りをお取りください。なお当山では、石材の撤去や行政手続きの代行は扱っておりません。この部分は、お墓のある地域の石材店とご自身の手続きで進めていただくことになります。
移す先の選び方|先に決めておく3つのこと
受け入れ先が決まらないと手続きが動きませんので、ここは早めに考えておきたいところです。事業者の一覧を作るよりも、次の3点をご自身の事情に当てはめて考えるほうが、迷いが少なくなります。
1. これから先、誰が守っていくのか
お墓を継ぐ方がいるのか、いないのか。ここで選ぶ形が分かれます。継ぐ方がいないのであれば、管理を寺院や霊園が引き受ける永代供養や納骨堂が候補になります。継ぐ方のいないお墓をどう考えるかは、継承者がいないお墓|引き受ける前の確認と供養の選び方にまとめています。
2. 個別に安置するのか、はじめから合祀するのか
永代供養には、他の方のご遺骨と一緒にお納めする合祀(ごうし)と、一定の年数を個別に安置してから合祀する形があります。合祀したあとは、ご遺骨を取り出すことができません。ここは後戻りのきかない分かれ道ですので、ご親族の意向も含めて確認してください。違いは永代供養の合祀との違いと個別安置、迷ったときの選ぶ順序で詳しく触れています。
3. 通える場所かどうか
改葬の理由の多くは「遠くて通えない」ことです。せっかく移しても、また通えない場所では同じことのくり返しになります。ご自身が年を重ねたあとでも行けるか、交通手段はあるか、足腰に不安が出たときに参拝できるかまで見ておくと、判断しやすくなります。和歌山で比べる際の見方は永代供養を和歌山で比べるとき、形の違いと費用の見方が分かりますにまとめました。
当山でお受けしている改葬後のご供養
当山は和歌山市新堀東にある日蓮宗の寺院です。改葬にあたって、移し先としてご相談をお受けしています。当山でお受けしているのは、お墓を片づけたあとのご供養の部分です。
- 墓じまい後のご先祖様の永代供養:1家分 20万円。納骨のみの場合は 10万円
- のうこつぼ(永代供養の付いた集合型の納骨墓):一室 50万円から。管理費(護寺会費)が年 3,000円
- 合祀供養 5万円/永代供養 15万円(毎月の命日のご供養とお彼岸・お盆のご供養付き。10年間は個別に安置し、その後合祀)
のうこつぼは、お骨の大きさや数に制限がなく、一室の費用はお一人でもご家族でも変わりません。古いお墓から複数のご遺骨が出てきた場合にも、まとめてお納めいただけます。血縁を問わないため、ご家族以外の方やペットと一緒にお納めいただくこともできます。墓石を建てる必要がなく、お手入れもいりません。
なお当山では、前に申し上げたとおり石材の撤去や行政手続きの代行は行っておりません。お納めいただいたあとは、月命日にお読経をあげ、日々のご回向(お経をあげて故人やご先祖様に功徳をお向けすること)を続けます。宗旨・宗派・国籍は問いませんので、他の宗派のお墓からの改葬でもご相談いただけます。
境内はバリアフリーに配慮しており、車椅子でもお参りいただけます。駐車場は25台、和歌山バス「堀止」から東へ徒歩約5分です。ご相談・ご見学は予約制で、受付は7:00〜18:00、電話(073-422-7968)またはフォームで承っています。住職が他の勤めに出ていることがありますので、お越しになる前に一度お電話をいただけると確実です。
改葬でつまずきやすいところ
ご親族への相談を後回しにしてしまう
手続き上は墓地の名義人の判断で進められる場面があっても、お墓はご親族皆さんの気持ちが向かう場所です。あとから「聞いていない」となると、供養そのものが気まずいものになってしまいます。時間はかかっても、先に話しておくほうが落ち着いて進みます。
申請先を間違える
改葬許可の申請先は、今ご遺骨がある場所の市町村長です(墓地、埋葬等に関する法律第5条)。移す先の自治体でも、ご自身がお住まいの自治体でもありません。遠方の場合は、往復の手間を見込んで日程を組んでください。
古いご遺骨の状態を想定していない
長い年月を経たお墓では、骨壺が土に還りかけていたり、水がたまっていたりすることがあります。取り出したあとに乾かす、洗浄するといった作業が必要になる場合があり、受け入れ先によっては骨壺の大きさや形に決まりがあります。移す先に、どんな状態で納められるかを事前に確認しておくと、当日あわてずに済みます。
合祀してから気持ちが変わる
合祀後はご遺骨を取り出すことができません。当山でも、納骨堂に安置している間は、それぞれの年数が終わるまで返還をお受けできますが、埋葬(合祀)後の返還はできません。迷いが残っているうちは、個別に安置する形から始めるという考え方もあります。
改葬の許可はどこに申請するのですか。
改葬と墓じまいは同じことですか。
古いお墓から複数のご遺骨が出てきた場合はどうなりますか。
他の宗派のお墓から日蓮宗のお寺へ移すことはできますか。
改葬の代行を寺院に頼むことはできますか。
ご相談・ご予約
ご相談・ご見学は、お電話(073-422-7968/受付 7:00〜18:00)またはフォームからお受けしています。住職 蘆田恵教が直接お受けします。
ご不明な点は、そのままお尋ねください。無理におすすめすることはありません。